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神戸地方裁判所 昭和62年(行ウ)30号 判決 1991年1月28日

兵庫県芦屋市三条町二八番一号

原告

延原千恵子

右訴訟代理人弁護士

大西佑二

明尾寛

兵庫県芦屋市公光町六二番二号

被告

芦屋税務署長 堀口賢太郎

右指定代理人

白石研二

国府寺弘祥

野口成一

大上良一

石川幸助

山藤和男

村松美律夫

大黒宏明

山越基博

宮岡孝

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告が、原告に対し、昭和六一年三月一一日付けをもってなした昭和五七年分所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定処分、昭和六一年五月二六日付けをもってなした昭和五七年分所得税の督促処分、昭和六二年三月二日付けをもってなした昭和五八年分ないし昭和六〇年分所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  昭和五七年分ないし昭和六〇年分の所得税について、原告のした各確定申告、これに対する被告の各更正及び各過少申告加算税の賦課決定(以下、右各更正を「本件各更正」と、本件各更正に付随する右過少申告加算税の賦課決定を「本件各決定」という。)、原告の異議、国税不服審判所長の審査裁決の経緯は、別表0ないし3のとおりである。さらに、被告は、昭和六一年五月二六日付けをもって、原告の昭和五七年分所得税の督促処分(以下「本件督促」という。)をした。

2  しかし、本件各更正のうち、各確定申告に係る所得金額を超える部分は、いずれも原告の所得を過大に認定した違法なものであり、したがって、本件各更正及びこれを前提とした本件各決定及び本件督促もまた違法である。

よって、本件各更正、本件各決定及び本件督促の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1は認め、2は争う。

三  被告の主張

1  訴外亡延原観太郎(以下「観太郎」という。)は、昭和四七年七月一七日死亡し、同人の子である原告、訴外延原星夫、同延原鈴子及び同延原久雄が観太郎の遺産を共同相続した。

A 不動産所得が生じた経緯

2  観太郎の死亡後、遺言書の効力等をめぐり、原告ら共同相続人の間で争いが起きた。

3  原告ら相続人四名は、観太郎の遺産を共同相続したことにつき、昭和四八年一月一七日に相続税の申告書を、同年八月二日に相続税の修正申告書(乙第一号証)をそれぞれ所轄税務署長に提出した。

4  原告は、右申告書及び修正申告書に、観太郎の遺産に占める自己の相続分を八〇分の三五としており、また星夫及び鈴子のそれは各八〇分の一九、久雄のそれは八〇分の七としている。

5  観太郎の遺産の中には、訴外延原倉庫株式会社(以下「延原倉庫」という。)への賃貸物件(物件の明細、賃貸料等については、別表4ないし7のとおり)が含まれていた。

6  延原倉庫は、支払うべき賃借料から固定資産税等の立て替えた経費を差し引いた残金を、大阪法務局へ供託している。

7  原告ら相続人は、現在に至るも遺言の効力等について係争中である。

B 原告の昭和五七年分の不動産所得金額の算出について

<省略>

1 総収入金額のうち相続財産分の算定明細

(一) 別表4の順号1ないし20、32及び33の各物件から生じた賃貸料は、別表4のとおり合計金三四九八万九八〇四円であり、前記A4で述べたように、右金額の八〇分の三五に相当する一五三〇万八〇三九円が原告分となる。

(二) 別表4の順号27及び28の各物件について、原告は、右各物件の持分四分の一を昭和五五年一一月一五日に訴外河野利貞(以下「河野」という。)へ譲渡したので、右各物件から生じた賃貸料のうち、原告の収入すべき金額は、右物件から生じた賃貸料八三四万一二〇〇円の八〇分の一五<省略>に相当する一五六万三九七五円である。

(三) 別表4の順号21ないし26、29ないし31の各物件の持分四分の一が、昭和五〇年一二月二二日に訴外延三名に支払っている(別表4の賃借欄表示の金額)ところ、右賃借料は、前記A4による原告、訴外延原星夫及び同延原久雄の三人で、三五対一九対七の比率で按分されるのである。

原鈴子より、延原倉庫へ譲渡されたので、延原倉庫は残りの四分の三相当部分に対して賃借料を原告ら

また、原告は、別表4の順号21ないし26の各物件について、持分四分の一を昭和五〇年七月一一日に、同順号29及び30の各物件について、持分四分の一を、昭和五三年四月一五日にそれぞれ河野に譲渡した。

(1) そこで、別表4の順号21ないし26、29及び30の各物件から生じた賃貸料に係る原告の持分は、前述の六一分の三五<省略>から右賃借料に係る河野の持分の差し引いた持分となるところ、右物件に係る河野の持分は四分の一であり、右物件の賃貸料は、全体のの四分の三相当に対して支払われているので、河野が取得すべき賃借料は、右賃貸料の三分の一相当となる。

したがって、原告の持分は一八三分の四四(六一分の三五から三分の一を控除した持分)であるので、右各物件から生じた賃貸料のうち、原告の収入すべき金額は、右各物件から生じた賃貸料三一三九万〇三五五円の一八三分の四四に相当する七五四万七四〇八円である。

(2) 別表4の順号31の物件に係る原告の収入すべき金額は、同物件から生じた賃貸料一二九万七六六九円の六一分の三五に相当する七四万四五六四円である。

2 必要経費のうち相続財産分の算定明細

(一) 固定資産税等の管理費用

(1) 別表4の順号1ないし20、32及び33の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、二八七三万六三三六円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の三五(前記1(一)と同じ)に相当する一二五七万二一四七円である。

(2) 別表4の順号27及び28の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三一万二三四〇円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の一五(前記1(二)と同じ)に相当する五万八五六四円である。

(3) 別表4の順号21ないし26、29及び30の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、二五三九万八一五〇円であり、原告の負担金額は右金額の一八三分の四四(前記1(三)(1)と同じ)に相当する六一〇万六六五九円である。

(4) 別表4の順号31の物件に係る固定資産税等の管理費用は、三万六六九〇円であり、原告の負担金額は、右金額の六一分の三五(前記1(三)(2)と同じ)に相当する二万一〇五二円である。

(二) 減価償却費

(1) 別表4の順号29及び30の建物(倉庫)は、それぞれ、昭和四〇年に一八四〇万六八一三円で、昭和四一年に九三〇万円で取得された物件であるので、その減価償却費は次のとおりとなる。

ア 別表4の順号29の建物(倉庫)について、昭和五六年で耐用年数の全期間が経過することになる。

しかしながら、右物件の昭和五六年分までの償却累計額が償却可能限度未満であるため、右物件の償却可能限度額から昭和五六年分までの償却累計額を差し引いた部分の金額(一年分の減価償却費が限度額)が本年の減価償却費となる。

(ア) 償却可能限度額 三一五万三二九九円

算式 <省略>

(イ) 一年分の減価償却費 一八万五二一五円

算式 <省略>

(ウ) 昭和五六年分までの償却累計額 二九六万三四四〇円

算式 185,215円×16年

(エ) ((ア)-(ウ)) 一八万九八五九円

(オ) 減価償却費 一八万五二一五円((イ)の額が(エ)の額を下回るときは、(イ)の額となる)

イ 別表4の順号30の減価償却費は、九万三五八〇円である。

算式 <省略>

(2) その他の建物及びクレーンはいずれも耐用年数を経過し、また、償却可能限度額もこえているので、減価償却の計算はできない。

3 不動産所得の金額

前記表のとおり原告の昭和五七年分の不動産所得の金額は、総収入金額二五七一万一〇三〇円から必要経費二〇三六万六八四七円を控除した五三四万四一八三円である。

C 原告の昭和五八年分の不動産所得の金額の算出について

<省略>

1 総収入金額のうち相続財産分の算定明細

昭和五七年分と同一である。

2 必要経費のうち相続財産分の算定明細

(一) 固定資産税等の管理費用

(1) 別表5の順号1ないし20、32及び33の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三二三五万九四三九円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の三五(前記B1(一)と同じ)に相当する一四一五万七二五四円である。

(2) 別表5の順号27及び28の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三一万二三四〇円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の一五(前記B1(二)と同じ)に相当する五万八五六四円である。

(3) 別表5の順号21ないし26、29及び30の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、二七九一万〇四七〇円であり、原告の負担金額は右金額の一八三分の四四(前記B1(1)と同じ)に相当する六七一万〇七一四円である。

(4) 別表5の順号31の物件に係る固定資産税等の管理費用は、三万六六九〇円であり、原告の負担金額は右金額の六一分の三五(同(2)と同じ)に相当する二万一〇五二円である。

(二) 減価償却費

(1) 別表5の順号29の建物(倉庫)について、昭和五六年で耐用年数の全期間が経過するこになる。

しかしながら、右物件の償却可能限度額が昭和五七年分までの償却累計額をこえる部分の金額(一年分の減価償却費が限度額)が本年の減価償却費となる。

ア 償却可能限度額は昭和五七年分と同額の三一五万三二九九円(B2(二)(1)ア(ア))である。

イ 一年分の減価償却費は昭和五七年分と同額の一八万五二一五円(同(イ))である。

ウ 昭和五七年分までの償却累計額 三一四万八六五五円

算式 185,215円×17年

エ 減価償却費(ア-ウ) 四六四四円

(2) 別表5の順号30の建物(倉庫)について、昭和五七年で耐用年数の全期間が経過することになる。

しかしながら、右物件の昭和五七年分までの償却累計額が償却可能限度額未満であるため、右物件の償却可能限度額から昭和五七年分までの償却累計額を差し引いた部分の金額(一年分の減価償却費が限度額)が本年の減価償却費となる。

ア 償却可能限度額 一五九万三一九七円

算式 <省略>

イ 一年分の減価償却費 九万三五八〇円

算式 <省略>

ウ 昭和五七年分までの償却累計額 一四九万七二八〇円

算式 93,580円×16年

エ (ア-ウ) 九万五九一七円

オ 減価償却費 九万三五八〇円(イの額がエの額を下回るときは、イの額となる)

3 青色申告控除額

租税特別措置法二五条の三に規定されている金額一〇万円である。

4 不動産所得の金額

前記表のとおり、原告の昭和五八年分の不動産所得の金額は、総収入金額二五七一万一〇三〇円から必要経費二二四七万三二三八円と青色申告控除額一〇万円を控除した三一三万七七九二円である。

D 原告の昭和五九年分の不動産所得の金額の算出について

<省略>

1 総収入金額のうち相続財産分の算定明細

(一) 別表6の順号1ないし20、32及び33の各物件について、原告の収入すべき金額は、前記A4で述べたように右各物件から生じた四一九三万九七四八円の八〇分の三五に相当する一八三四万八六四〇円である。

(二) 別表6の順号27及び28の各物件について、原告の収入すべき金額は、前記B1(二)で述べたように右各物件から生じた賃貸料一〇〇〇万九四四〇円の八〇分の一五に相当する一八七万六七七〇円である。

(三) 別表6の順号21ないし26、29及び30の各物件について、原告の収入すべき金額は、前記B1(三)(1)で述べたように右各物件から生じた賃貸料三八〇〇万一七九〇円の一八三分の四四に相当する九一三万七〇四三円である。

(四) 別表6の順号31の物件について、原告の収入すべき金額は、同(2)で述べたように右物件から生じた賃貸料一六一万二六三四円の六一分の三五に相当する九二万五二八二円である。

2 必要経費のうち相続財産分の算定明細

(一) 固定資産税等の管理費用

(1) 別表6の順号1ないし20、32及び33の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三三四〇万一四九二円であり、原告の負担金額は、右金額の八〇分の三五(前記B1(一)と同じ)に相当する一四六一万三一五三円である。

(2) 別表6の順号27及び28の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三一万二三四〇円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の一五(前記B1(二)と同じ)に相当する五万八五六四円である。

(3) 別表6の順号21ないし26、29及び30の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、二八八二万一二五〇円であり、原告の負担金額は右金額の一八三分の四四(前記B1(三)(1)と同じ)に相当する六九二万九六九九円である。

(4) 別表6の順号31の物件に係る固定資産税等の管理費用は、三万六六九〇円であり、原告の負担金額は右金額の六一分の三五(同(2)と同じ)に相当する二万一〇五二円である。

(二) 減価償却費

(1) 別表6の順号29の建物(倉庫)については、昭和五八年で償却可能限度額をこえているので、減価償却の計算はできない。

(2) 別表6の順号30の建物(倉庫)について、昭和五七年で耐用年数の全期間が経過することになる。

しかしながら、右物件の償却可能限度額が昭和五八年分までの償却累計額をこえる部分の金額(一年分の減価償却費が限度額)が本年の減価償却費となる。

ア 償却可能限度額は昭和五八年分と同額の一五九万三一九七円(C2(二)(2)ア)である。

イ 一年分の減価償却費は昭和五七年分と同額の九万三五八〇円(B2(二)(1)イ)である。

ウ 昭和五八年分までの償却累計額 一五九万〇八六〇円

算式 93,580円×17年

エ 減価償却費(ア-ウ) 二三三七円

3 青色申告控除額

昭和五八年分と同額の一〇万円である。

4 不動産所得の金額

前記表のとおり、原告の昭和五九年分の不動産所得の金額は、総収入金額の三〇八三万四七七九円から必要経費二三〇五万二二三五円と青色申告控除額一〇万円を控除した七六八万二五四四円である。

E 原告の昭和六〇年分の不動産所得の金額のの算出について

<省略>

1 総収入金額のうち相続財産分の算定明細

昭和五九年分のそれと同一である。

2 必要経費(固定資産税等の管理費用)のうち相続財産分の算定明細

(一) 別表7の順号1ないし20、32及び33の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三六五九万五八三〇円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の三五(前記B1(一)と同じ)に相当する一六〇一万〇六七六円である。

(二) 別表7の順号27及び28の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三一万二三四〇円であり、原告の負担金額は右金額の八〇分の一五(前記B1(二)と同じ)に相当する五万八五六四円である。

(三) 別表7の順号21ないし26、29及び30の各物件に係る固定資産税等の管理費用は、三一六七万五六二〇円であり、原告の負担金額は右金額の一八三分の四四(前記B1(三)(1)と同じ)に相当する七六一万五九九六円である。

(四) 別表7の順号31の物件に係る固定資産税等の管理費用は、三万六六九〇円であり、原告の負担金額は右金額の六一分の三五(同(2)と同じ)に相当する二万一〇五二円である。

3 青色申告控除額

昭和五八年分と同額の一〇万円である。

4 不動産所得の金額

前記表のとおり、原告の昭和六〇年分の不動産所得の金額は、総収入金額三〇八三万四七七九円から必要経費二五二七万六四四八円と青色申告控除額一〇万円を控除した五四五万八三三一円である。

F 本件課税処分の適法性にについて

原告の係争各年分に係る不動産所得の金額は前記BないしEのとおりであるところ、この範囲内でなした本件各更正は適法であり、また、本件各更正に伴う本件各決定(過少申告加算税の各賦課決定処分)もまた適法である。

四  被告の主張に対する認否

Aのうち、1、2及び7は認め、4及び5は否認し、3は申告書の提出日を否認しその余を認め、6は供託していることを認め、支払うべき賃借料を否認する。

Bのうち、1は各持分の譲渡を認めその余を否認し、2は不知、3は争う。CないしEについては、それぞれ、1の否認はB1と同じであり、2は不知、3は認め、4は争う。Fは争う。

第三証拠

証拠は、記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1(処分・裁決の経緯)については、当事者間に争いがない。

二  本件各更正の適法性

1  不動産所得が生じた経緯について

(一)  原告らの相続(被告の主張A1)、相続人間の争いの未決着(同Aの2及び7)、原告の相続税申告書及び同修正申告書の提出(同A3。但し、提出日付けは争いがある)については、当事者間に争いがない。

(二)  成立に争いのない甲第一号証及び乙第一号証によれば、原告は、各相続人の相続分につき、当初の申告書の中において、原告分〇・五四、延原鈴子分〇・二三、延原星夫分〇・二三、延原久雄分〇とし、また、修正申告書の中において、原告分を〇・四三七五(=八〇分の三五)から〇・四三八一へ、延原鈴子分を〇・二三七五(=八〇分の一九)から〇・二三五一へ、延原星夫分を〇・二三七五(=八〇分の一九)から〇・二四〇二へ、延原久雄分を〇・〇八七五(=八〇分の七)から〇・〇八六六へ、それぞれ、修正するとしていることが認められ、原告の相続分を少なくすると原告に帰属する不動産所得も少なくなるので、原告にとって最も有利な選択である原告分を〇・四三七五(=八〇分の三五)とした場合によって具体的税額を算出することにする。

(三)  賃借権について

賃料の供託(被告の主張A6)については当事者間に争いがなく、この事実と前掲甲第一号証及び乙第一号証、成立に争いのない甲第一八号証、乙第一〇ないし第一二号証、原本の存在及びその成立に争いのない乙第一三号証及びこれにより成立を認めうる乙第二号証、第四号証の一ないし五、第六号証によれば、観太郎は、生前、延原倉庫に対し、土地、建物等を賃貸していたこと。その賃貸の対象、賃料、対象物件の固定資産税額は、別表4ないし7の記載のとおりであると認めることができる。

(四)  不動産所得の発生

よって、原告は、観太郎の賃貸人としての地位を相続によって相続分の割合によって承継したというべきであるから、右賃料の取得をもって不動産所得(所得税法二六条第一項)があったことになる。なお、相続人間で右賃貸の対象物件を含む相続財産の帰属についての争いが未決着であるが、これを理由に所得税の課税を留保することは、納税義務者の恣意を許容し、課税の公平を著しく害することになるから、許されないと解すべきである。

2  昭和五七年分ないし昭和六〇年分不動産所得金額

被告の主張BないしEのうち、各持分の譲渡及び青色申告控除額については、当事者間に争いがなく、これに前1項で確定した事実を総合すると、昭和五七年分ないし昭和六〇年分の不動産所得金額を、被告の主張BないしEのとおり、算出することができる。

3  まとめ

本件各更正は、右各年度の不動産所得金額の範囲内でしたものであるから、適法である。

三  本件各決定の適法性

前記の原告の過少申告につき正当な理由は見出せないから、本件各決定は、いずれも適法である。

四  督促処分について

原告の昭和五七年分所得税の更正処分は適法であるから、本件督促もまた適法である。

五  結論

よって、本件請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 林泰民 裁判官 岡部崇明 裁判官 井上薫)

別表0

昭和57年分の課税の経過及びその内容

<省略>

別表1

昭和58年分の課税の経過及びその内容

<省略>

別表2

昭和59年分の課税の経過及びその内容

<省略>

別表3

昭和60年分の課税の経過及びその内容

<省略>

別表4

昭和57年分賃貸料等の明細

<省略>

別表5

昭和58年分賃貸料等の明細

<省略>

別表6

昭和59年分賃貸料等の明細

<省略>

別表7

昭和60年分賃貸料等の明細

<省略>

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